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技能実習生・留学生と新型コロナウイルス

技能実習生は、日本に来てから2ヶ月の講習が終わると、ビザのことを除けば、日本人と同じように働く人、労働者としての権利があります。働く留学生も、労働者としての権利があります。たとえば28時間を超えて働いても、入管からペナルティはあるかもしれませんが、28時間を超えた分の給料は払ってもらえます。
労働者の権利はたくさんあります。たとえば、あなたは会社に給料や残業代を請求できます。条件がそろえば有給休暇も取れます。仕事に関係する病気やケガに備えるため、会社はあなたを労災保険に入れなければなりません。労災保険に入ったら、仕事に関係して実際に病気にかかったりケガをした場合は、会社は、労災保険を使って治療を受けさせたり、あなたにお金を出してもらうようにしないといけません。会社がやってくれないときは、労働基準監督署から指導してもらえます。

では、新型コロナウイルスであなたの会社や仕事に影響が出た場合はどうなるのでしょうか。

 実際にあなたが新型コロナウイルスにかかり仕事を休んだ場合は、仕事に関係して感染した場合は労災保険が使えることがあります。たとえば、あなたの仕事場でクラスターが発生した場合には使えることがあります。仕事に関係なく感染した場合は、健康保険から傷病手当が支払われます。健康保険に入っていないときは、国民健康保険に入っていれば、新型コロナウイルス感染症の場合に限っては、傷病手当が支払われることがあります。国民健康保険から傷病手当が支払われるのは、宇都宮市は大丈夫ですが、宇都宮市以外ではどこに住んでいるかで違うかもしれないので、役所に聞いて下さい。

 このほか、今、国がいくつも新しく支援のための制度を作ろうとしています。休業補償は会社が払うのですが、それとは別に、あなたが失業していなくても失業したと同じように直接国にお金を請求できる制度が新しくできそうです。

※「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」、いわゆる「みなし失業」、受付中。

アルバイトができなくなった留学生がお金をもらえる制度もできそうです。ただし、成績上位3割程度に限るという条件がつきそうです。※「学生支援緊急給付金」。現在募集終了

 1人に10万円支給される制度もあります。宇都宮市の場合、今年の8月31日までに申請しなければいけません。わからないときは、市役所から来た郵便をみて、市役所に相談して下さい。期限は住んでいるところにより違いますので注意して下さい。

※「特別定額給付金」。現在終了

技能実習生のビザのことを書きます。飛行機が飛ばなかったり、本国内で移動に制限があるなどの理由で、本国に帰ることが難しい人は、特定活動という別のビザに切り替えることができるかもしれません。技能検定のテストが受けられない人、特定技能のビザに切り替えられないでいる人も、特定活動という別のビザに切り替えることができるかもしれません。新型コロナウイルスで会社の経営が厳しくなって解雇された場合は、解雇は違法だと争うこともできますが、新たな受け入れ先が決まれば、そちらで働くビザに変えることもできます。技能実習生の普通の転職と違い、特定技能ビザの対象業種なら、今までと違う業種で働くこともできることがあります。
脱稿 2020年6月5日
改訂 2020年10月14日
最新の情報は別途ご確認ください。
初出、栃木タイムズ2020年7・8月号(№309)

新型コロナウイルス感染症と労災

1,みなさんの働く職場では、労災保険に入っているでしょうか。労働者を1人でも雇っている職場では、ごく一部の例外を除き、雇い主は働く人を労災保険に入れないといけません。労災保険の保険料はすべて雇い主が支払います。労災保険では、働く人がケガをしたり、病気になったり、障害が残ったり、亡くなったときに、お金が貰えるなどの補償があります。労災によって、働く人が貰えるお金などを労災補償といいます。どのくらいの補償が受けられるかは、ケガや障害の重さ、亡くなった場合など、それぞれに決められてます。あなたが労災に入っていない、またはそもそも職場で誰も労災に入っていない場合は、ケガをしたり亡くなったりした後からでも、遡って労災に加入できます。労働基準監督署(*1)に相談してください。また、労災補償が受けられるような事故が起こっているのに、労災を使わせずに、たとえば会社の健康保険を使わせたりすることは「労災隠し」といわれ、犯罪にもなります。これも労働基準監督署に相談してください。

2,労災がもらえるのは、(1)仕事が原因でケガや病気になったり、障害が残ったり、亡くなったりしたとき、(2)職場の行き帰りにケガをするなどしたとき、の二つです。このどちらでもないときは、労災は使えないので、会社の健康保険などを使います。今回は(1)の方だけ説明します。

 「仕事が原因でケガや病気になった」といえるためには、(a)仕事が原因でケガや病気をしたこと、(b)仕事をしているときのケガや、仕事のときのことが原因での病気であることが必要です。(a)と(b)の違いがわかりにくいと思います。たとえば、職場でお昼休み中にケガをしても、(b)はありますが、原則として(a)はないとされ、労災は使えません。病気で労災がもらえるにも、(a)、と(b)の二つが両方ともそろわないといけません。新型コロナウイルス感染症について、この(a)と(b)の話をします。

3,まず、(a)については、新型コロナウイルス感染症に感染した原因が仕事や職場になければいけません。感染症にかかるのはウイルスや細菌に感染するからです。しかし、たとえば、風邪やインフルエンザの場合、職場で感染したのか、そうではないのかはわかりません。自宅や買い物したお店の中などでも、気づかない間にうつります。職場に風邪やインフルエンザの人がいて、その人からうつったかなと思っても、労災がおりないのはそのためです。

 しかし、新型コロナウイルス感染症については、ここが広く認められています。たとえば、クラスターが発生した職場で働いているとか、多数の人を接客する仕事をしているなどです。厚生労働省が通達を出しています。

 つぎに、(b)については、感染の危険がある職場で働いているなどの理由により、認められることが多いでしょう。

4,クラスターは、職場の狭い休憩室で話をしていたなどでも発生しています。仕事場だけではなく、休憩場所や移動中の車の中なども、感染ルートになるかも知れません。職場でよく話し合い、問題があるときは雇い主に申し出てください。労災とは違う話ですが、たくさんの人が集まるパーティーなどでもクラスターが発生しています。十分に注意してください。

脱稿 2020年10月8日
初出、栃木タイムズ2020年11月・12月号(№311)

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